16ページ 3 まちのバリアを考える かっこ1 バリアはどこにあるでしょうか  実践のための3つのステップに沿って、まちのバリアをなくすためにできることを考えて いきましょう。 場面@ 移動 バリアはどこにあるでしょうか イラスト @重い荷物を持って、杖をついて疲れた様子で歩いている高齢の人。 A車いす使用者が、入り口の段差で店にハイれずに困っている。 B黒地に紫色の字で書かれた文字が見えず、看板の内容がわからずに困っている人 C歩道橋を上ろうとしているベビーカーを利用している人が階段の下で困っている。 D白杖を使って、点字ブロックじょうを歩く視覚障害のある人が、進行方向を放置自転車で 塞がれて困っている。 配慮のポイントは20から21ページ 17ページ 場面A 職場や窓口でのコミュニケーション バリアはどこにあるでしょうか イラスト @受付に来ている車いす使用者と同行者。窓口の係員が、同行者の方を見て、書類とペンを 差し出したので、同行者は困り、車いす使用者は不満げな表情を浮かべている。 Aオフィスで、上司からの口頭での説明や指示がわからず、困っている職員。 Bようやくオフィスについた つらい と思いながら出勤してきた職員 C待合席に座る人が、自分の番号が呼ばれたのに気付かずにいる。 D受付窓口に行きたい白杖を持っている人が、点字ブロックや案内がないため、どこが窓口か分からず困っている。 配慮のポイントは22から23ページ 18ページ 場面B 店舗でのコミュニケーション   バリアはどこにあるでしょうか イラスト 飲食スペースのあるお店 @ヘルプマークをつけたカバンを持っている人が、店内で大声を出して興奮している。 A子どもが棚に置かれたチョコをとろうと手を伸ばしているが、棚が高くて取れない。 B外国人が、日本語しか書いていないメニューの内容がわからず、こまっている。 C補助けんをつれている人が、店員に入店を断られている。 D車いす使用者が、開き戸を開けられないため、入店できずに困っている。 E注文をしたいと思っている人が、インターホンを使えずに困っている。 配慮のポイントは24から25ページ 19ページ 場面C 施設・設備の利用 バリアはどこにあるでしょうか イラスト @女性と大きな男の子が、一緒にだれでもトイレに入る様子を、周りの人が不審そうに見て いる。 A障害者とう用駐車区画に他の車が停まっていて、車いす使用者の車が駐車できない。 B横に階段があるエレベーターの前に、長蛇の列ができている。 肩から大きな荷物を下げているベビーカー利用者が、長蛇の列を見て困っており、ベビー カーの赤ちゃんも泣いている。 Cヘルプマークをつけた人が、使用中の表示がついただれでもトイレの前で困っている。 配慮のポイントは26から27ページ 20ページ かっこ2 場面ごとの配慮のポイント 場面@ 移動 イラスト @杖をついて歩いている高齢者が、ベンチに座り、休んでいる。 A店の入り口にスロープが設置され、車いす使用者がはいれるようになっている。 B看板が黒地に黄色の文字でかかれており、だれもがわかりやすくなっている。 Cベビーカー利用者に、何かお手伝いしましょうか と手助けの声がかかっている。 D視覚障害のある人が、スムーズに歩けるよう、周りの人が点字ブロック上の自転車を移動 させている。 21ページ 解説@ 1 高齢になると、視力や聴力、身体機能が低下することがあります。移動に当たっては、 階段での昇降や横断歩道での歩行とうに配慮が必要です。  また、負担のない移動経路や休憩できるスペースなどの環境整備が整えば、外出しやす くなります。 2 車いすを使用している人が安全に移動できるためには、段差のないルートや通路幅の確 保が必要です。施設の整備が難しくても、スロープの準備やテーブルの移動とうの工夫に より、車いす使用者が使いやすい店内にすることができます。 3 色の見え方に特性のある人は、赤と緑、水色とピンクとう、見分けにくい色の組合せが あるので、印刷物やホームページ、案内サインとうでは、色の組合せや、文字と背景のコ ントラスト、模様や境界線を加えるとうの配慮が必要です。   イラスト 色の組み合わせの絵 見わけしやすい組み合わせ例、しろいろと青色、黄色とくろいろ、緑の明暗 見わけしにくい組み合わせ例、しろいろと黄色、あかいろと緑色、緑色と茶色 4 ベビーカーを利用する乳幼児づれの人が安全に移動できるよう、階段とうでは、ベビー カーを持つ手助けをするなどの配慮が必要です。  妊産婦は体調が変化しやすく、お腹が大きくなるとバランスがとりにくくなったり、足 元が見えなくなるため、段差とうでの転倒に注意が必要です。 5 白杖を持って歩いている人が、まちの中で迷っている様子であったり、転落や衝突の危 険がある場合には、声をかけることが必要です。   また、視覚障害者誘導用ブロックの上には、通行の妨げになるものを置かないよう配慮 することが必要です。視覚障害には、全く見えない全盲や、見えにくい又は多少は見える 弱視があり、弱視の人の見え方は様々です。 イラスト 白杖SOSシグナルのイラスト 白杖を垂直に頭上に掲げるSOSのサイン イラスト 弱視の人の見え方 正常な見え方、ぼやける、眩しい、真ん中が見えない、真ん中しか見えない 22ページ 場面A 職場や窓口でのコミュニケーション イラスト @窓口に来ている車いす使用者と同行者。窓口の係員は、かがんで目線の位置を合わせ、車 いす使用者の方を見て話している。 Aオフィスで、上司からメモや資料により、丁寧に説明を受けている職員 Bようやくオフィスについた職員に対して、大丈夫、無理しないで、と声をかける同僚職員 C音声に加えて、電光表示の案内をすることで、待合席に座る聴覚障害のある人が、自分の 順番が来たときに、きづけるようになっている。 D受付け窓口に行きたい視覚障害のある人に対して、どちらに御用ですか と声をかけてい る。 23ページ 解説A 1 車いすを使用している人は、少しかがんでもらうなど、視線の高さを合わせてもらえる と話しやすくなります。  本人を尊重するために、同行者ではなく、本人に直接はなしかけるよう努めることが重 要です。  写真 かがんで、視線の高さを合わせ、車いす使用者と話す様子 2 職場や窓口とうにおいて、「話している内容を十分に理解できない」、「落ち着きがなくミ スが多い」という人がいたら、コミュニケーションにおいて工夫することが必要です。  簡潔に、ゆっくり、具体的に分かりやすく話しかけ、メモや図などを使って説明するこ とが効果的です。  また、どのようなやり方をすれば、円滑に仕事ができるのか、本人と話しながら、対応 策を講じることが重要です。 写真 コミュニケーションボードを使用して、話す様子 コミュニケーションボードの説明 文字や話し言葉によるコミュニケーションが難しい人に 対して、イラストを指差すことで自分の意思を伝えるボード 3 人と話すと緊張したり、疲れやすかったりする人もいます。そうした人には、本人のペ ースを尊重して、まずは話を聞くことに努め、穏やかに対応することが重要です。  上司や同僚など、職場全体で本人の状況について理解し、必要なときにサポートするこ とも重要です。 4 声をかけても気づかない人は、聴覚に障害があったり、日本語がわからないのかもしれ ません。  聴覚障害の場合、人によって聞こえ方のほか、文章の読み書きや手話の能力が異なるこ とから、本人に確認しながら、その人に合った方法で情報を伝える必要があります。 5 窓口とうの場所が分からず困っている人には、施設や店舗の職員とうから声をかけて、 用件を確認する必要があります。  また、視覚障害のある人に対する説明では、「それ」 「このくらい」 といった表現や 指差しで示すのではなく、「あなたの正面」 「○○くらいの大きさ」 などと具体的に説 明する必要があります。   24ページ 場面B 店舗でのコミュニケーション イラスト 飲食スペースのあるお店 @興奮して大声を出していた人が、店員から店の混雑状況について説明を受けることで、納 得して、穏やかな表情になっている。 A子どもの手が届かない、棚の高いところにあるチョコを、店員がとってあげている。 Bメニューに写真や絵を掲載し、日本語がわからない外国人でも注文できるよう配慮してい る。 C補助けん をつれて入店した人に、店員が席を案内している。 D店員が扉を開け、おさえることで、車いす使用者が入店できている。 Eインターホンのある窓口で、注文をしたい聴覚障害のある人に対して、店員が出てきて筆 談で対応している。 25ページ 解説B 1 本人にとって気になることがあり、じっとしていられない、あるいは、突然大きな声を 出すなどの行動をとる人がいる場合には、まずは、本人の話を聞いて、どういう気持ちなの か理解に努めることが重要です。偏見を持たずに、コミュニケーションをとることから始め てみましょう。 その上で、「静かにしてほしい」など、何かを伝える必要があれば、わかりやすく、ゆっくり、 落ち着いて話してみましょう。 本人が興奮していて、自分一人での対応が難しい場合は、周りの人に協力を求めながら対応 することも必要です。 2 身体が小さい子供は、高い場所のものを取ることができないことに配慮するとともに、 子供の視点で環境を見直すことが必要です。これは、車いす使用者も同様です。また、階 段の段が高いところや車両とホームの隙間とうで、周りの人が注意する必要があります。 3 外国人には、案内表示や説明文、メニューとうに、多言語での表記やふりがな併記、ピ クトグラム かっこ絵文字 イラスト、写真とう、分かりやすい情報提供が必要です。     また、やさしい日本語 ※G を使用することも有効です。  飲食店とうではメニューの多言語対応に加え、多様な食文化や宗教に基づく食習慣、食 の制限があることから、食に関する情報提供が必要です。  イラスト 多言語メニューのイラスト 4 同伴している犬が補助けんの場合もあります。身体障害者補助けんほう ※H に基づ き、公共施設や交通機関、スーパー、飲食店、ホテル、病院、宿泊施設とうは、補助けん を同伴して利用できることを、事業者や利用者は理解する必要があります。  補助けんが障害のある人の目や耳や手になって働いているときは、周囲の人は不必要な 声かけや触ることを控える必要があります。 写真 補助けん 5 車いす使用者は、段差を乗り越えることや開き戸を自分で開けることが難しいため、周 囲の人が配慮する必要があります。車いす使用者が円滑に利用できる環境整備として、自 動ドアや引き戸にすることが必要です。 6 聴覚に障害のある人は、声だけでやりとりするインターホンでコミュニケーションを行 うことが困難です。聴覚に障害のある人が情報を入手したり、コミュニケーションを行う ためには、手話通訳や要約筆記 ※I のほか、筆談、コミュニケーションボード、音声 を文字に変換するアプリとうの準備が必要です。 写真 タブレット端末を使用した遠隔手話通訳の様子 26ページ 場面C 施設・設備の利用 イラスト @女性とヘルプマークをつけた大きな男の子が、一緒にだれでもトイレに入ろうとしている。 周りの人は、ヘルプマークに気付いている。 A障害者とう用駐車区画に停めた車から、車いす使用者が降りてきている。 B肩から大きな荷物を下げているベビーカー利用者が、エレベーターにのっており、同乗者 と笑顔で話している。 C階段を利用できる人がエレベーターの利用を控えることで、エレベーターの列がなくなっ ている。 D内部障害のある人が、オストメイト設備のあるだれでもトイレに入ろうとしている。 27ページ 解説C 1 高齢の人や障害のある人との外出において、トイレの利用で介助が必要な場合に、性別 に関わらず利用できる場所に設置されただれでもトイレを、異性であっても一緒に利用す ることがあります。  また、男女別のトイレを利用しにくいLGBT ※J の人が、だれでもトイレを利用 することもあります。  写真 だれでもトイレの様子 2 車いす使用者は、車から乗り降りするために広いスペースの駐車区画が必要です。その 区画を円滑に利用できるよう、他の利用者は利用を控えるなどの配慮が必要です。 写真 広いスペースの駐車区画の様子 3 乳幼児づれの人は、乳幼児が泣いたり、ベビーカーや乳幼児のための荷物も多く、「周り に迷惑をかけているのではないか」と気にかけている人もいます。  外出しやすい環境のためには、エレベーターやベビーチェア、ベビーベッドのあるトイ レ、授乳・おむつ替えに対応したスペースなどの整備とともに、乳幼児づれの人や妊産婦 に対する周囲の人々の理解と配慮が必要です。 4 エレベーターを必要としている人が円滑に移動できるよう、階段を利用できる人は、混 雑時には、エレベーターの利用を控えるなどの配慮が必要です。 5 内部障害 ※K のある人は、外見からは障害のあることが分かりにくい人もいます。 人工肛門をつけている人には、オストメイト ※L 対応の水洗器具があるトイレの場所 を案内する必要があります。  また、広いスペースやオストメイト対応の設備とうを備えた だれでもトイレは、必要 としている人が優先して使用できるよう配慮する必要があります。  写真 オストメイト対応の水洗器具のようす